【解説】親の介護が必要になったとき…知っておきたい【介護認定調査】のすべて

大切な家族に介護が必要になった時、まず何から始めたら良いのか分からず、不安になる方も多いのではないでしょうか。
特に「介護認定調査」という言葉は、初めて耳にする方にとっては、手続きや内容が分かりにくく、戸惑ってしまうかもしれません。

この記事では、働く世代の方々に向けて、介護と仕事の両立を支援する制度の一つである「介護認定調査」について、その目的から流れ、注意点、そして調査後の手続きまで、分かりやすく丁寧に解説します。

この記事を通して、介護認定調査への不安を少しでも解消し、スムーズに手続きを進めていただけるようサポートいたします。

介護認定調査:その目的と重要性


介護認定調査とは、介護を必要とする方の心身の状態を客観的に評価するための調査です。
市区町村から委託を受けた調査員か市区町村の担当職員が、自宅を訪問し、日常生活における動作や認知機能、精神状態などについて、面談形式で詳しく聞き取りを行います。

この調査結果と主治医の意見書を基に、どの程度の介護が必要なのかが8段階の「要介護度」で判定されます。
要介護度に基づいて利用できる介護サービスの種類や範囲が決まるため、介護認定調査は適切なサービスを受けるための重要な第一歩と言えるでしょう。

スムーズな調査のために:流れと準備

申請から調査開始まで

1. 申請:お住まいの市区町村の窓口、または地域包括支援センターに申請を行います。
2. 連絡:申請後、市区町村から調査日時の連絡が入ります。ご都合に合わせて調整が可能ですので、ご安心ください。
3. 調査:調査員がご自宅に訪問し、調査を行います。

事前の準備で心にゆとりを


* 現状を整理:介護が必要な方が、日常生活でどのような場面で困っているのか、何ができて何ができないのかを具体的にリストアップしておきましょう。
* 記録を用意:介護日記や病院の診察券、お薬手帳など、日々の状況が分かる記録があると、調査がスムーズに進みます。
* 質問リスト:調査員に聞きたいことを事前にまとめておくと、聞き忘れを防ぎ、疑問を解消することができます。

調査項目:どんなことを聞かれるの?

調査は、「基本調査」と「概況調査」の2種類で行われます。

基本調査:6つの視点から心身の状態を把握

1. 身体機能・起居動作:基本的な動作能力をチェック


高齢者が生活する上で必要とされる基本的な生活動作を確認します。安全を確認したうえで歩く、足を上げるなど実際の動作を確認します。
* 麻痺の有無
* 関節の可動範囲
* 寝返り、起き上がりができるか
* 座った姿勢が保てるか
* 両足で立っていることができるか
* 歩行できるか
* 椅子などから立ち上がれるか
* 片足で立っていることができるか
* (お風呂で)全身が洗えるか
* つめ切りができるか
* 視力、聴力

2. 生活機能:日常生活の動作を評価


日常生活で行う動作や外出頻度などの生活活動について確認します。
* 乗り移りの動作ができるか(ベッドから車椅子へ、車椅子から便座へなど)
* 食べ物を飲み込むことができるか
* 食事を摂ることができるか
* 排尿・排便ができるか
* 歯磨きができるか
* 洗顔ができるか
* 整髪ができるか
* 衣類の着脱ができるか
* 外出頻度

3. 認知機能:記憶力や理解力などを確認

意思の伝達や短期記憶、場所の理解などの認知機能について確認します。
* 意思の伝達ができるか
* 毎日の日課を理解しているか
* 生年月日や年齢が答えられるか
* 面接調査の直前に何をしていたか思い出せるか(短期記憶)
* 自分の名前が答えられるか
* 今の季節を理解しているか
* 自分がいる場所を答えられるか
* 目的もなく動き回るか(徘徊)
* 外出して戻れないことがあるか

4. 精神・行動障害:精神状態や行動の傾向を把握

精神症状や普段の行動について確認します。
* 「物盗られ妄想」など被害的な行動があるか
* 事実とは異なる話をすることがあるか
* 感情の不安定さがあるか
* しつこく同じ話をすることがあるか
* 大声を出すことがあるか
* 介護に抵抗することがあるか
* 「家に帰る」など落ち着きがない行動があるか
* 一人で外に出たがり目が離せないことがあるか
* いろいろなものを集めたり、無断で持ってくることがあるか
* 物や衣類を壊すことがあるか
* ひどい物忘れがあるか
* 独り言や独り笑いをするか
* 自分勝手な行動をすることがあるか
* 話がまとまらず、会話にならないことがあるか

5. 社会生活への適応:社会生活を送る能力を評価

社会生活への適応について確認します。
* 薬の内服ができるか
* 金銭管理ができるか
* 日常で意思決定ができるか
* 集団への不適応があるか
* 買い物ができるか
* 簡単な調理ができるか

6. 特別な医療:必要な医療行為の有無を確認


過去14日間に受けた特別な医療の有無を評価する項目です。この項目における「特別な医療」とは、医師または医師の指示に基づいて看護師などが行う医療行為に限定されます。継続して実施されている特別な医療のみが対象です。そのため、調査日に医療行為が終了して完治している場合は、過去14日間に医療行為をしていても、継続して行われていないため該当しません。「特別な医療」には、次の12項目が定められています。
1. 点滴の管理
2. 中心静脈栄養
3. 透析
4. ストーマ(人工肛門)の処置
5. 酸素療法
6. レスピレーター(人工呼吸器)
7. 気管切開の処置
8. 疼痛の看護
9. 経管栄養
10. モニター測定(血圧、心拍、酸素飽和等)
11. 褥瘡(じょくそう)の処置
12. カテーテル(コンドームカテーテル、留置カテーテル、ウロストーマ等)

概況調査:生活状況全体を把握

利用中のサービスの状況や家族状況、自宅の状況などを確認します。

調査当日の注意点:正確な評価のために

  1. ありのままを伝える:現状を正確に伝えることが、適切な介護サービスを受けるために非常に重要です。
  2. 家族も同席:本人が伝えきれない情報などを補足することで、より正確な評価に繋がります。
  3. メモを活用:日頃から困っていることや日常生活の様子をメモしておくと、スムーズに伝えることができます。
  4. 落ち着いて対応:緊張しやすい場合は、深呼吸をするなどしてリラックスした状態で調査を受けましょう。
  5. 質問は遠慮なく:少しでも疑問に思ったことは、その場で調査員に確認しましょう。

調査員について:どんな人が来るの?

介護認定調査員は、市区町村の職員または委託を受けた事業所の職員で、介護や医療、福祉に関する専門知識と経験を持ち、研修を受講したプロフェッショナルです。
プライバシー保護についても十分な配慮がなされていますので、安心して調査を受けてください。

ケアマネージャーとは違います。今後、介護更新時は担当ケアマネージャーが行うようになります。

調査後の流れ:認定結果からサービス利用開始まで

  1. 審査・判定:調査結果と主治医の意見書を基に、コンピュータによる一次判定、そして介護認定審査会による二次判定が行われ、要介護度が決定されます。
  2. 通知:約30日以内に、認定結果と被保険者証が郵送で届きます。
  3. ケアプラン作成:要介護認定を受けた後、ケアマネジャーがご本人やご家族の希望に沿ったケアプランを作成します。
  4. サービス利用開始:ケアプランに基づき、必要な介護サービスの利用を開始します。

認定結果に納得できない場合:見直しの手続き

認定結果に納得できない場合は、市区町村の窓口に相談し、「不服申し立て」または「区分変更申請」を行うことができます。

要介護認定で利用できるサービス例

  • 訪問介護
  • 通所介護(デイサービス)
  • 短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 福祉用具貸与
  • 住宅改修

認定の有効期限

認定には有効期限があり、新規申請の場合は原則として6ヶ月です。状態によっては3ヶ月〜12ヶ月の範囲で設定されることもあります。有効期限が切れる前に更新手続きが必要です。

よくある質問

調査時間はどれくらいですか?

通常1時間〜1時間半程度です。

調査費用はかかりますか?

介護保険の適用範囲内であれば、費用はかかりません。

まとめ:介護認定調査を理解し、安心して手続きを進めましょう

介護認定調査は、適切な介護サービスを受けるための大切な第一歩です。
ご家族が安心して生活を送れるよう、この記事で解説した内容を参考に、
疑問や不安を解消し、調査に臨んでいただけることを願っています。
正確な情報を伝えることで、適切な要介護認定を受け、必要なサービスを利用できるようになります。

調査当日は、疑問点や不安な点を、遠慮なく認定調査員に質問することも大切です。
認定調査員は介護に関する専門知識を持った trained のプロフェッショナルです。
疑問を解消し納得した上で調査を進めることで、よりスムーズで安心感のある手続きとなるでしょう。

もちろん、要介護度に関する具体的な判断などはできませんが、
調査項目に関する説明や手続きに関する質問などには丁寧に答えてくれます。

また、さらに詳しい情報が必要な場合や、調査後も疑問が残る場合は、市区町村の窓口に相談することができます。
安心して手続きを進め、ご家族にとって最適な介護サービスを見つけていきましょう。

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kaigoya

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