まだ元気だ、と笑う父へ
「まだ元気だ」――そう言って、老いていく親の頑固さに、あなたは途方に暮れていませんか?
仕事と介護の板挟みで、心身ともに疲弊し、誰にも相談できず、孤独を感じているあなたへ。
この物語は、そんなあなたに寄り添い、希望の光を灯す、一人の男性の感動の実話です。
家族だからこそぶつかる葛藤、そして、その先に待つ温かい再生の物語を、ぜひ読んでみてください。
まだ元気だ、と笑う父へ
崩れゆく日常 - 忍び寄る不安と孤独
山本和夫(仮称)、45歳。都内で働くビジネスパーソン。
普段は明るい彼だが、最近は影を落としている。
同居する父、父の足腰がめっきり弱り、転倒が増えたのが原因だ。
介護が必要だと感じていたが、父は「まだ元気だ」と頑なに拒否。
介護申請を促すことさえ難しく、和夫は途方に暮れていた。
妻は家事と育児に追われ、父の介護には無関心。
中学生の息子と小学5年生の娘も、まだ幼く頼りにならない。
和夫は孤独な戦いを強いられていると感じ、誰にも相談できずにいた。
孤立無援の闘い - 職場の壁、家族の無理解
仕事と介護の両立、親の介護、同居、介護拒否、在宅介護、ケアマネージャー…
これらの言葉が、和夫の頭の中をぐるぐる回る。
ある日、会社で仕事と介護の両立支援セミナーが開かれたものの、
職場の雰囲気は他人事。介護の話はタブーのようなものだった。
若い同僚からは冷たい視線や陰口を浴びせられるのが怖く、和夫は口をつぐんだ。
相談できる相手もおらず、孤立感はますます深まるばかりだった。
限界を超えて - 押し寄せる絶望、迫られる決断
父の転倒は続き、ついに救急搬送される事態に至る。
幸い大事には至らなかったものの、和夫の心は折れかけていた。
仕事と介護の板挟みで限界を感じていた矢先、社内では大型の新規プロジェクトが立ち上がり、
和夫にも重要な役割が任された。
責任は重大で、残業も増えることが予想される。
和夫は辞表を出すことまで考え始めた。
本音の衝突、そして希望の光 - 父と子の葛藤、心の再生
そんな時、社内で行われた両立セミナーで一
緒に聞いていた上司の言葉が蘇ってきた。
「家族だからこそ、本音でぶつかり合えるんだ」。
上司は自身の介護経験を語り、家族といかに向き合ったかを話してくれた。
その言葉は、和夫の心に深く響いた。
春の陽射しが、まだ少し肌寒い病室に差し込んでいた。
和夫は腹をくくった。
父に真剣に向き合い、転倒の恐怖、自分の不安、、
そして何より父を心配する気持ち、全てをぶつけた。
「お父さん、もう無理しないでほしい。こんど転んだらどうするの?僕は…僕は怖いんだ」。
声は少し震えていた。
すると、頑なだった父の目に涙が浮かび、
「心配かけて…すまない」と呟いた。
静寂が病室を包んだ。
初めて見せた弱さに、和夫は胸の奥が熱くなるのを感じながら、
救われた気がした。
小さな一歩、大きな変化 - 動き出した歯車、未来への希望
翌日、和夫はケアマネージャー事務所へ連絡し、父の状況を説明。
サービス導入に向けて動き出した。
まだ不安は残るが、小さな一歩を踏み出したことで、
未来への光が見えた気がした。
築かれる絆 - 仕事と介護の両立、そして家族の未来
数ヶ月後、父はデイサービスに通い始め、和夫の負担も軽減された。
以前はほとんど会話もなかった二人だが、少しずつ言葉を交わすようになった。
父はデイサービスで他の高齢者と交流するようになり、表情も明るくなった。
和夫も心に余裕ができ、子供たちと過ごす時間も増えた。
妻も、和夫の頑張りを見て、少しずつ家事を手伝うようになった。
家族の関係は、少しずつだが確実に変わり始めていた。
仕事と介護の両立は、簡単な道のりではない。それでも、和夫は確信していた。
家族だから、乗り越えられると。
そして、いつかはこの経験が、家族の絆をより強くするものになると信じていた。
和夫は、同じように仕事と介護に悩む人たちに伝えたいと思っていた。
「諦めないで。きっと光が見える日が来る。大切なのは、家族への愛と、そして自分自身を信じることだ」と。
最後までお読みいただきありがとうございました。
あしかけ約30年間の在宅介護から、
お役になれば、そしてヒントになれば幸いです。
“かいごや“
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